軍司貞則 『高校野球「裏」ビジネス』
軍司貞則 『高校野球「裏」ビジネス』(ちくま新書 2008年)
これは、おもしろい。野球ノンフィクションでは、久々の大ヒットです。
ライオンズの裏金問題に端を発した高校野球特待生問題を入り口に、不透明な金銭問題や野球留学の底に深く根を張るボーイズリーグの実態に切り込んでいきます。どの情報も、作者が足で地道に稼いだものばかりで、その労力には頭が下がる思いです。情報提供者との人間関係の構築など、非常に手間がかかる地道な取材活動の結晶が本書でしょう。
内容もさることながら、その文体や構成も秀逸で、最後までぐいぐいとひきつけられます。作者の旅の進行と共に、「高校生とカネ」、いや「中学生とカネ」と言った方がいいのか、次第に暴かれていく日本野球界の暗部。
高校野球の監督、ボーイズリーグ関係者、学校経営者、野球ゴロ、ブローカー、元プロ野球選手…。
人身売買とすら受け取れる、中学生に群がる大人たちの生々しい、どろどろした証言の数々。
いまや日本一の投手となった“宮本有”、PL学園を裏で支えた人材供給担当の男、東北地方で繰り広げられる熾烈な甲子園出場(と中学生獲得)競争、その根っこを手繰ると、出てくるのはボーイズリーグの存在。確かに、ボーイズリーグを抜きに特待生問題(や野球留学問題)を論じても、「絵に描いたもち」でしょう。それにしても、高野連とはどこまで堕落した団体なのか。
「野球とカネ」。どこかで聞いた話と思うなかれ、綿密な取材による裏づけが単なる噂を“現実”へと昇華させています。『Number』に既出の話もありますが、野球ファンなら一読をお薦めします。
