考察 「三浦(横)は是か非か」
先発投手の強化のため、三浦(横)の獲得に力を入れているというタイガース。
先発の駒不足が、今シーズン終盤での失速の大きな要因であり、そのため、先発強化は最優先の課題の一つです。果たして、三浦(横)はそんな“弱投”を救うことができる存在なのでしょうか。
◆貯金は増えるか?
表1は、ここ5年間の三浦(横)の成績です。
2ケタ勝利は2005年と07年の2回、勝ち数が負け数を上回った、いわゆる貯金を作った状況は05年の1回だけです。05年は最優秀防御率(2.52)のタイトルも獲得しています。ちなみに、この年は、ベイスターズが優勝した1998年(12勝7敗)に次ぐ、三浦(横)にとってキャリア2番目の成績でした。
| 年度 | 試合 | 勝利 | 敗戦 | S | 投球回 | 防御率 |
| 04 | 22 | 6 | 8 | 0 | 144 | 4.25 |
| 05 | 28 | 12 | 9 | 0 | 214 2/3 | 2.52 |
| 06 | 30 | 8 | 12 | 0 | 216 2/3 | 3.45 |
| 07 | 28 | 11 | 13 | 0 | 185 1/3 | 3.06 |
| 08 | 21 | 7 | 10 | 0 | 144 | 3.56 |
三浦(横)の場合、勝ち数が2ケタ前後なら、負け数も2ケタ前後という傾向にあります。
かつては1997年に7つ、98年、2000年、01年の3年間に、5つの貯金を作った実績がありますが、ここ3年間は2ケタの負け数が続き、借金生活です。果たして、タイガースでどの程度の貯金を作ることができるかと考えると、懐疑的になっても仕方ありません。
◆「タイガース・キラー」ゆえの問題
タイガース戦通算37勝15敗を誇る三浦(横)は、いわゆる「タイガース・キラー」で、タイガースに移籍すると勝ち数が大きく減るのではないかと言われています。次に、この点を検証してみます。
| 年度 | 勝利 | タイガース戦 | ||
| 勝利 | 敗戦 | 先発 | ||
| 04 | 6 | 4 | 2 | 7 |
| 05 | 12 | 3 | 0 | 7 |
| 06 | 8 | 0 | 3 | 5 |
| 07 | 11 | 2 | 2 | 5 |
| 08 | 7 | 4 | 1 | 5 |
2008年は7勝のうち4勝(1敗)がタイガース戦、05年は12勝中3勝(0敗)、04年は6勝中4勝(2敗)がタイガース戦と、確かにタイガースから多くの勝ち星を挙げています。ただし、2006年は0勝3敗、07年は2勝2敗と、必ずしも「キラー」とは言えない年もあります。しかも、2006年はタイガース戦に5度に先発して3敗、残る2試合も責任投手にはなっていませんが、ベイスターズが負けています。
ここ5年間に限れば、タイガース戦を得意としながらも、年ごとの変動が大きいのが実態です。
タイガースに移籍すると、お得意様がいなくなり勝ち星が減るという指摘は間違いではありませんが、必ずしもそうとは言い切れない面もあります。
◆「先発完投型」の補強になるのか
表3は、2008年11月15日付けのスポニチの記事からまとめた今シーズンのタイガース先発陣と三浦(横)の平均投球回数の比較です。タイガースの最長が安藤の6.19回に対して、三浦(横)は6.86と全投手を上回っています。これだけを見ると確かに、頼もしい先発完投型の補強となりそうです。
| 投手 | 先発 | 平均投球回 | 勝利 | 防御率 |
| 安藤 | 25 | 6.19 | 13 | 3.20 |
| 下柳 | 27 | 6.01 | 11 | 2.99 |
| 岩田 | 27 | 6.19 | 10 | 3.28 |
| アッチソン | 12 | 5.08 | 5 | 4.72 |
| ボーグルソン | 12 | 5.44 | 3 | 3.99 |
| 三浦 | 21 | 6.86 | 7 | 3.56 |
しかし、岡田前監督の哲学の下、タイガースの先発投手の交代は比較的早めでした。実際、もう1イニングはいけると感じた試合も少なくありません。ベイスターズの場合は、中継ぎ陣の不安定さから、なかなか先発投手を交代させにくかった面もあるでしょう。さらに、来季、真弓監督は、岡田前監督よりも交代のタイミングが遅いかもしれません。
同じ記事によれば、三浦(横)のここ3年間の平均投球回数は、2006年から7.22、6.62、6.86とやや落ち目なのも気になります。
以上の点を考慮すると、先発完投型の補強とは言い切れない面もあります。
◆三浦(横)を獲得するべきか
以上の考察をまとめると、三浦(横)は大きく貯金を貯めることができる投手ではない。2ケタ勝つか勝たないかという投手である。しかも、お得意様のタイガースに移籍し、勝ち星が減る可能性も少なくない。平均投球回数はタイガースの全投手を上回るが、来季もこの状態を維持できるかというと、ここ3年間で投球回数は減少傾向にあるという不安材料もある。
これだけを考えると、三浦(横)の獲得には二の足を踏まざるを得ません。
しかし、三浦(横)のここ5年間の年間投球回数は144~216回2/3とそれなりに安定しています。年間これだけを安定して投げてくれると、ローテーションは助かります。さらに、強力な中継ぎ陣がそろっているというチーム状態や、父親が岡田前監督の施設応援団「岡田会」のメンバーという虎ファン気質が、投球を後押しするかもしれません。
いずれにしても、過去の成績だけで、来シーズンを予測するには限界があります。
しかるに、一つだけ言えることは、過度な期待をすべきではないということでしょう。
ファンは、FAで入団した選手には、大きな期待をしてしまいがちです。何の記事が忘れてしまいましたが、松村邦洋氏がファイターズから移籍してきた片岡について、非常にうまいことを言っていました。それは、「移籍後の片岡に失望したファンも少なくないようだが、片岡は移籍前から同程度の成績だったのに、タイガースファンは3割30本を期待してしまい、その結果として片岡に失望したのでは」という趣旨のものでした。三浦(横)の場合も、同じ轍を踏みかねません。
三浦(横)クラスの投手が一人増えれば、チームにとってマイナスの訳がありません。
そういう意味では獲得は正解です。しかし、それほど大きな戦力の上昇にはならない可能性もあります。まして、3年9億円(スポニチ同記事)に値するかどうかは、きわめて判断が難しいと思います。
いずれにしても、もし三浦(横)がタイガースに来てくれるのであれば、ファンは、2ケタ勝って当たり前という投手ではないことは念頭において、お迎えするのが良いのではないでしょうか。
注)今回のエントリーは、Tigers DATA Lab.さんのデータを参照させていただきました。

